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「人間は人生の3分の1を眠りに費やしている」と言われてきた。しかし、睡眠時間は減少の一途。今や「人間は人生の4分の1を眠りに費やしている」と言ったほうが正しい状況にある。 1994年、日本人が睡眠に充てる時間は7.6時間だった。しかし、わずか3年後の1997年には、7.1時間に減少。さらに勤労者を対象にした2000年の調査では、6.5時間にまで落ち込んでいる。20歳代にいたっては平均6.2時間実際に寝ている時間は5.9時間で、6時間を割り込んでいる。 4人に1人不満 最近の厚生省の調査では、成人のほぼ4人に1人が、睡眠に対する不満を持っていることもわかった。夜間に眠りをとれないと、日中、眠気に襲われることが多くなり、作業能力や判断力が低下する。居眠り運転をしていた新幹線の運転手が、睡眠に障害を抱えていたことは記憶に新しい。 さらに、睡眠時間の減少は、思わぬところで深刻な影響を及ぼしている。「記憶」への障害だ。 人間の眠りは、就寝から目覚めまで、一定の状態にあるわけではない。「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」と呼ばれる2種類の眠りを、約90分おきに繰り返している。レム睡眠は、睡眠の中でもっとも浅い眠り。脳は起きている状態に近く、逆に筋肉は最も力が抜けている。一方、ノンレム睡眠は、浅い眠りから深い眠りまで4段階に分類される。このうちノンレム3、4段階は、もっとも深い眠りに就いている状態で、大脳は完全に休息している。いわゆる熟睡状態にある。 相互に密接な関係 記憶も、大きく二つに分類される。ひとつは歴史の年号を覚えたり、出会った人の名前を覚える「頭の記憶」、もうひとつは自転車の乗り方やはしの持ち方といった「体の記憶」。興味深い研究結果がある。就寝前に「体の記憶」に関する学習を行うと、レム睡眠の時間が長くなる。また、ノンレム睡眠の時に声をかけるなどして睡眠を邪魔すると、就寝前の「頭の記憶」に障害が出ることがわかった。つまりノンレム睡眠とレム睡眠は別々の記憶と関係していて、ノンレム睡眠は「頭の記憶」、レム睡眠は「体の記憶」に関係していたのだ。 さらに、レム睡眠は睡眠前の記憶だけでなく、起床後の記憶過程にも影響することが、県環境科学研究所と徳島大学との研究で明らかになった。レム睡眠中に声をかけて起こし、レム睡眠だけを奪うように操作。起床後に「音が聞こえたら目を閉じる」といった「体の記憶」に関する学習を行ったところ、レム睡眠を妨げられた人たちの成績が落ち込んでいたのだ。 このように、睡眠と記憶が密接に関係していることが明らかになりつつある。近年の睡眠時間の減少傾向が、人間の暮らしや行動などに大きな影響を及ぼしている可能性は高い。睡眠を見つめることは、人生の4分の1の時間を快適にすることであり、さらに、残りの4分の3を含めた、人生全体の時間を向上させることにほかならない。 県環境科学研究所は現在、睡眠薬などに頼らず、睡眠の質を向上させる寝室環境について調査している。たとえば、眠りと体温の関係。今後は、温度や匂いなどが睡眠に及ぼす影響を調べ、睡眠の質を向上させるための寝室環境を提言していきたいと考えている。 |